人の歯は年とともに、少しずつ悪くなっていくものですが、その悪くなる程度は人によって様々です。30代にして歯がなくなってしまう方、80才になってもしっかり歯が残り機能している方等いろいろです。その差はどこになるのでしょうか考えてみたいと思います。
まず体質の問題があります。
歯の質、むし歯菌に強い弱いの違いは確かにあります。又、歯周病も歯をなくす原因の50%になりますが、歯周病菌に対する抵抗力にも、個人差があります。これらの体質は遺伝によって決定してしまっているので、どうすることもできません。しかし、歯が弱い体質の方でもそれで、どうしようもないとあきらめてしまうのには、早すぎなのです。なぜなら、他にも歯を悪くする要素はあるからです。
甘いもの(特にあめとチョコレート)が好きであったり、ブラッシングが不足したり、歯石除去を定期的に行わなかったり、端数が不足してしまい、他の歯が負担過重と、歯を悪くしていく条件はいろいろあります。しかし、つきつめていくと、歯を悪くするのは2つの原因に集約できます。
1つは、細菌。もう1つは力です。細菌は、口腔内に多数存在し、数億から1兆にもなるといわれています。位相差顕微鏡を見ると、動く細菌を目で確認できます。これらの菌(むし歯菌、ストレプトコッカスミュータンス等、歯周病菌、ジンジバリス等)の影響のもとで、むし歯や歯周病がおこってきます。むし歯は、歯に穴をあけ、歯牙そのものを崩壊させ、彫っておくと抜歯に至らせてしまいます。又、歯周病は、歯の周囲の骨を溶かし、やがて手当てを遅らせると抜歯に至ります。
1歯なくすと、その対合歯(上の歯ならその向かいの下の歯)も役目と失いますので、2本の歯が機能を失い、1本、歯を失うごとに2本ずつ歯の機能を失います。すると2本歯を失うと4本歯を失ったことになり、28本あった歯が24本になります。
そうなると28本でかつてやっていた咀嚼運動を24本でやらなくてはならなくなります。そうすると咀嚼する仕事量は変わらないので残る24本の歯の負担は28/24=1.17倍に増えます。奥歯に限定的に考えてみると歯は前歯と臼歯にわかれ、臼歯の数は上下16本、前歯の数は上下12本になります。
臼歯部の2本の歯が失われると4本の臼歯が機能を失うことになりますので、臼歯16本は12本になり16/12=1.33、一歯あたりの負担は3割強増しになります。3度の食事にその負担がかかると、2年-3年とたつうちに自然とムリな力が残存歯にかかることになり、歯周病の原因になっていきます。又、従来の欠損補綴(歯のなくなった所を補うためのブリッジや義歯等)では、なくなった歯は見かけ上、復活しますが歯冠(歯の頭の部分)のみにとどまり、歯根部分は復活いていませんので、結果、残存歯への負担になり、欠損を本質的に解消したことにはなりません。その結果、歯牙は細菌と力の過重負担によって徐々に失われてゆき、全歯牙喪失も稀ではありません。
年令別歯牙残存歯数のカーブは、直線ではなく、上に凸の二次関数の様な曲線になります。これは、年令と共に加速度的に歯牙を失うスピードが早まることを意味します。むし歯、歯周病だけでは、直線を形成するはずですが、上の凸の曲線カーブをとることからわかるように、力の過重負担が関与しているからに他なりません。
そこで登場してくるのがインプラントで、これは日本語で人工歯根の事を意味します。今までなしえなかった技術で、従来欠損補綴と言えば、ブリッジとか義歯でしたが、それらは、歯冠(歯の頭の部分)は復活しますが、歯根は復活していませんでした。そのため、復活は一時的、徐々に残存歯に負担をかけ、全歯牙を助ける予防処置にはなっていませんでした。しかし、インプラントは、残存歯の寿命を伸ばすと同時に、咀嚼能力を復活させることができます。今までの天然歯の能力を復活し、健康を維持させる能力を持っています。ですので、歯が欠損したら、インプラントが一番の選択肢になります。1本歯がなくなれば、そこの所に人口歯を埋めて、歯根と歯冠を再生する。これが基本的に正しい歯の治療と考えられます。他方(ブリッジとか義歯)では、隣接歯に負担をかけ、長い目で見れば、徐々に歯を失っていくことになります。歯をなくさせない様に予防することが、第1ですが、もし失ったらその後のことを考えて、インプラントにするべきだと思います。もちろん、複数歯、歯をなくされている方も、咀嚼の回復と、残存歯を守る意味でも、インプラントは有効な方法と思います。
又、咬合をインプラントにして、しっかりと復活させると、全身にも好影響を及ぼすことが知られています。咬合の左右のバランスが狂うと、様々な不調(肩こり、頭痛、腰痛)がおこることがありますが、インプラントによる左右の咬合が安定することによって、それらの不定愁訴(原因不明の体調不良)が改善することがあります。咬合の安定は、単に咀嚼力の向上だけではなく、全身の健康の復活も成し遂げると言えます。又、奥歯で強くものが噛めると、脳への血液量が増えることも知られており、脳の若がえりに寄与しています。つまり、ボケ防止、アンチエイジングの効果もあると言えます。しかし、インプラントを埋める場所は、骨の充分にある場所が望ましいのですが、そればかりではありません。骨吸収がおこり、埋入できにくい場所もあり、埋入が難しくなることがありますが、骨補填材等で工夫をし、増骨してインプラントすることもできます。